IT業界でソフトウェア開発を請け負う場合の代表的な契約形態
- 請負契約
- SES契約
についてまとめてみました。
請負契約とは
請負契約の特徴
請負(うけおい)とは、当事者の一方(請負人)が相手方に対し仕事の完成を約し、他方(注文者)がこの仕事の完成に対する報酬を支払うことを約することを内容とする契約。日本の民法では典型契約の一種とされ(民法632条)、特に営業として行われる作業又は労務の請負は商行為となる(商法502条5号)。
受託開発、SI(システムインテグレーション)などで普通に使われる契約形態です。
まず、誤解しやすいですが著作権について。
成果物の著作権は、請け負った制作者にある場合が多く、依頼者にあるのは成果物の使用権です。
ただし、多くの場合、受託した側が納品後1年間、成果物の瑕疵に対して品質を担保する必要があり、バグが発生すると無償で修正する必要があります。
この契約の場合、開発作業する場所は受注者側が行うのが普通で、開発に必要なパソコンや開発ツールは受注者が用意する必要があります。
また、通常は受注者が仕事の管理を行い、現場の開発の指揮を摂ります。
発注者の注意点
ソースコードの著作権が受注者にある場合、納品後、発注者は常に受注者のサポート体制に依存することになります。
お金を受け取るまでは「ちゃんとした」対応してくれた発注者が、納品後に豹変するかもしれません。
信頼できる相手かどうか発注する前に見極める必要があります。
受注者の注意点
受注者が注意しないといけないことは、事前の見積金額です。
見積金額には、仕様通りにソフトウェアを開発した時にかかる工数と、納品後1年間に発生する不具合修正にかかる工数をあらかじめ想定しておかないといけません。
見積もる上で、仕様書の作成は欠かせません。
また、納品後もサポートできるだけの要員を確保する必要があります。
ただ、1年後にさらに保守契約を結べるメリットもあります。
SES契約 (システムエンジニアリングサービス契約) とは
SES契約の特徴
システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)とは、システムエンジニアが行うシステム開発等に関する、委託契約の一種(委任・準委任契約等)で、システムエンジニアの能力を契約の対象とするものである。
SES契約は工数提供、派遣、客先常駐、タイムアンドマテリアルなどで使われる契約形態です。
作業中に作成した成果物の著作権は、仕事を依頼した側にあります。
時間単位でお金が支払われるのが普通です。
依頼された側のプログラムでバグが発生した場合であっても、依頼された側の責任はなく、依頼者が更なるお金を払うことで修正します。
この契約ではパソコンや開発ツールなどは発注者が用意します。
また、通常は発注者が仕事の管理を行い、現場の開発の指揮を摂ります。
発注者の注意点
時間ごとに支払いが発生するために工数の管理は必須です。
また、単価に見合ったスキルのある人物かどうかの判断も必要です。
単価に見合わない人物の場合、人を変更するなどで対応します。
受注者の注意点
サービス残業など、契約外の仕事を依頼されていないか見極める必要があります。
あらかじめ決められた時間を超過した場合、発注者に請求できますが、様々な人間関係から請求できないこともあります。
請負契約かSES契約か
受注する側から見ると、請負契約は成果物保証であるために、リスクがあると言えます。
そのため、コンティンジェンシーのための価格を見積もりに上乗せする必要があります。
一方、SES契約では契約期間での最大の努力は必要ですが、プロジェクトが遅れたとか、予定通りの仕様で作れなかったなどの結果に対して責任は持ちません。
この点から、SES契約で受注する方が有利に見えますが、必ずしもそうは言えません。
というのは、SES契約では客先に常駐することが多いため、派遣のような仕事の進め方となります。このため、一般的にストレスが多いようです。
発注者、受注者ともに言えることですが、請負契約とSES契約でどちらが得とか損とかそういうものではありません。
お互いにベストな選択を行うことが大事です。
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