ムーアの法則とは
ムーアの法則とは、インテル社の創業者のひとりであるゴードン・ムーアが1965年に自らの論文上に示したのが最初であり、その後、関連産業界を中心に広まりました。
元の文章は次の通りです。
The complexity for minimum component costs has increased at a rate of roughly a factor of two per year. Certainly over the short term this rate can be expected to continue, if not to increase. Over the longer term, the rate of increase is a bit more uncertain, although there is no reason to believe it will not remain nearly constant for at least 10 years.
部品あたりのコストが最小になるような複雑さは、毎年およそ2倍の割合で増大してきた。短期的には、この増加率が上昇しないまでも、現状を維持することは確実である。より長期的には、増加率はやや不確実であるとはいえ、少なくとも今後10年間ほぼ一定の率を保てないと信ずべき理由は無い。すなわち、1975年までには、最小コストで得られる集積回路の部品数は65,000に達するであろう。私は、それほどにも大規模な回路が1個のウェハー上に構築できるようになると信じている。
ムーアの法則についてはIT業界では単純に、「半導体の集積密度は18~24カ月で倍増し、チップは処理能力が倍になってもさらに小型化が進む」というように理解されています。
ムーアの法則は、大規模集積回路の製造・生産における長期傾向について論じた1つの指標であり、経験則に類する将来予測です。
ムーアの法則の限界、終了?
ムーアの法則については、過去何度も限界説がささやかれていたものの、ほぼ法則通りに推移しています。
一方、2017年、NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、「ムーアの法則は終わった。マイクロプロセッサはもはや、かつてのようなレベルでの微細化は不可能だ」と、ムーアの法則の限界について言及しました。
また、米国半導体工業会(SIA)が出した「2015年の半導体国際ロードマップ」と題するレポートでは2021年で崩れると予測しています。
(https://www.semiconductors.org/main/2015_international_technology_roadmap_for_semiconductors_itrs/)
物質を無限に分割することはできず、いずれ原子の大きさという壁にぶつかります。
トランジスタは、原子の格子構造によって電流(電子)を制御するため、5nm付近になると原子1個(およそ0.1nm)の大きさが影響を与えるようになります。
その結果、回路を流れる電流、つまり移動する電子も、リード線の幅に対する抵抗や、物理学上の不確定性原理や、その他さまざまな理由から影響を受け、電子回路が実現できなくなるわけです。
このため、集積回路が原子や素粒子からできていることを考えれば、物理学の点から、いつかはムーアの法則に限界が来るのは明らかです。
2005年4月13日、ゴードン・ムーア自身が、「ムーアの法則は長くは続かないだろう。なぜなら、トランジスタが原子レベルにまで小さくなり限界に達するからである」とインタビューで述べています。
一方で、AIの技術的特異点 (シンギュラリティ) でも有名な未来学者であるカーツワイルは、なんらかの新しい技術が現在の集積回路技術を置き換え、ムーアの法則は2020年以降もずっと長く維持されるのではないか、と推測しています。
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